日本塩学会誌
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空隙率から見た食塩の粉体的性質
杉山 幹雄
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1962 年 16 巻 3 号 p. 131-138

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抄録

(1) 食塩の粉体的諸性質の中で固結に関しては空隙率が最も重要であると考えられるので, これを中心として種々の検討を行なつた. 粒径の異なる粒子の混合粒体における空隙率についてはすでにFumasによつて研究されているので, サムプルとしてはほぼ食塩本来の立方体と見なし得る形状を有する精製塩と丸味を帯び幾分不規則な形状を有する缶詰用塩を標準篩で篩別して粒径を揃えたものを用いた.
(2) 最密充填状態における空隙率は篩別粒径および水分に関係なく缶詰用塩では34.80%, 精製塩では33.58%であり, ある結晶缶から同時に排出された食塩母集団においては粒子の幾何学的形状が粒径に関係なく相似であると見なされる.
(3) 空隙率εに対する圧力Pの影響はAthyが土圧とその空隙率はについて提唱した式と一致する. すなわち, ε=ε0e-βP(1)
である. ただし,ε0は初期の空隙率, βは圧縮係数であつて, 両者ともサムプルおよび試験条件によつてバラツキが非常に大きいが,
β=const. (1.1)
ε0=f (σ, ψ, m) (1.2)
としてよいものと思われる. ただし, σは粒度分布, ψは表面の粗さをも含めた粒子の形状, mは水分である. βは一般の国内塩について篩別の有無に関係なく10を底として0.05程度の値である. また, ε0は篩別されたサムプルについては粒径dに対して
ε0=E0e-γd (1.3)
の関係が成り立つものと見られる. ただし, E0, γは常数である. なお, ε0はmが増せば大きくなる傾向を有する.
(4) 嵩比重ρ, 真比重ρ∞および散塩の深さhにおける圧力Pの間には
ρ=ρ∞ (1-ε)(1>ε>0) (2)
P=∫h0ρdh (3)
の関係があるから (1), (2) および (3) 式をρおよびPについて解くと
(4)
(5)
となる. (4) 式はρ∞に収歛する曲線であるが, ある深さhmにおいて嵩比重ρが最密充填状態のρmに達したとすると
ρ=ρm (h≧hm) (4′)
となり, (5) 式についても
(5′)
となる. なお, (5) 式に対する漸近線は
P=ρ∞h+1/βln (1-ε0) (5″)
である.
また, 重量Wの散塩が底面積Aの上に同一の高さhで存在すると仮定すれば
(6)
となる. 一般の国内塩についてはε0を0.5と見なしても大過ないので, ρ∞を純粋な食塩の場合の2.16と見なして (4),(5) および (6) 式をそれぞれ
(7)
P=20 log {0.5 (1+10-0.108h)} (8)
h=0.925_log (2・100.05W/A-1) (9)
と見なしても実用上では差支えないものと思われる. ただし, 単位はm, kg/cm2である.
以上の各式は堆積された食塩が自重のみにより圧密される場合に適用されるものであつて, 堆積時における踏み固め等の外力による圧密が行なわれる場合には適当な修正を行なう必要がある.
(4) 坂出市西浜における1万5千トンの野積散塩に関する現場試験のデータを検討した結果, 深さh (単位m) における嵩比重ρは便宜的には (4) および (4′) 式において (h+1) の値に相当すると見なしてよいことが判明した. したがつて, 圧力Pは (3) 式においてρを1から (h+1) まで積分して求められる.
(5) 最密充填状態にあるサムプルに対し飽和食塩水による定水位透水試験を行なつてDarcyの法則に一致する結果を得, また篩別したサムプルにおいては透水係数が粒径dの自乗に逆比例する結果を得た. 缶詰用塩および精製塩のそれぞれにおける透水係数の比は2.24という大きな値であり, 透水係数に対する空隙率の影響に関する諸説の中で最も大きく作用するExp. 7.0を用いてもそれぞれの空隙率の比からは1.28にしか達しないので, 両者の透水係数の差はそれぞれの粒子の形状の差による空隙の形状の差が原因であると考えられる.

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