抄録
三種の前駆物質, I, II, III型は, いずれも4MgCO3・Mg(OH)2・5H2Oの組成をもつている. 斜方格子構造を推定すると, 格子定数a0, b0は大体等しく, c0だけが異なる. I型のc0を基準にとると, II型のc0は約2倍, III型は約3倍となる. この仮定から, 三種物質は層構造で, 層積状態の異なるものではないかと想像される.
三種物質の比重, 屈折率, 溶解度の間で, 多少の差異は認められる. とくに溶解度はI型<II型<III型の順位であつて, 生成過程の変化順位III型→II型→I型とは逆である.
三種物質の示差熱分析では, I, II型は似た分解を示し, III型とは著しく異つている. この理由について, 構造上の差異が考えられるが, 嵩体積 (I, II型は固結状, III型は分散軽質) その他の影響も検討する必要がある.