日本海水学会誌
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ラクトフェリン投与による海産魚の体表粘液分泌充進
角田 出佐藤 利夫川口 明廣
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1997 年 51 巻 1 号 p. 51-57

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抄録

(1) ラクトフェリン (LF) をブリ, マダイ, ヒラメ, メバミル, マハゼの稚魚に経口投与し (0.2mg, 2mg, 20mg, 200mg/kg体重/日), 12日間の体表粘液分泌活性 (単位体表面積当たりい分泌されるタンパク質量) の変化を調べた. 実験水温は20℃であった。
(2) LF投与区, 特に1日当たり2mg~200mg/kg体重のLFを投与した区では, 各魚種とも, 対照区に比べて飼育期間中の死亡魚数は減少する傾向を示した.
(3) 試験開始時の単位体表面積当たりに分泌されるタンパク質量は, プリで1.47±0.25μg/mm2,マダイで1.73±0.24μg/mm2,ヒラメで1.54±0.27μg/mm2,メバルで1.69±0.34μg/mm2,マハゼでは1.45±0.31μg/mm2であり, 各魚種とも, 試験期間を通じて対照区の体表粘液分泌活性に有意な変化は認められなかった.
(4) 海産魚の体表粘液分泌活性を有意に上昇させるのに必要なLFの投与量は, マダイのようなLFに対する感受性の高い魚 (0.2mg/kg体重/日のLF投与でも粘液分泌活性は上昇する) を除くと, 養殖魚・天然魚の区別無く, 2mg/kg体重/日以上であった.
(2) 20mgまたは200mg/kg体重/日のLFの経口投与により5魚種の体表粘液分泌活性は3日から6日で有意に上昇した.
(6) LFの投与によって上昇した体表粘液の最大分泌活性値は, マダイでは通常分泌活性値の約2倍, 他の4魚種では1.4~1.7倍程度であった.
(7) LFの投与による体表粘液分泌の亢進効果は, 調査した5魚種中ではマダイで最も高く, 次いでヒラメ, マハゼ, ブリ, メバミルの順に低くなった。

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