2001 年 55 巻 1 号 p. 31-38
青潮の発生レベルにある水圏からの硫化水素の除去をめざして, 光独立栄養細菌である緑色硫黄細菌Chlorobium limicolaの連続培養実験 (23℃, pH6.5±0.3) を嫌気条件下で行い, 硫化水素の液相酸化に関する量論および速度論について検討した. C. limicolaによる溶存硫化水素の酸化過程では, 消費された硫化水素と等モルの元素硫黄が生成され, 硫酸イオンやチオ硫酸イオンは生成されないことが確認された. 光源として白色蛍光灯 (ピーク波長580nm付近) を用いて測定された比増殖速度は, 溶存硫化水素濃度 (0.03~3.16mol・m-3) と光強度(200~16000 lx) を制限因子とするモノ-型増殖速度式で表現することができた. 一方, 菌体収率は, 光強度に無関係に, 硫化水素の消費量と菌体数の増加量から推定された. 溶存硫化水素濃度が2.29mol・m-3, 光強度が5000 1xの場合では, C. limicolaによる硫化水素の比酸化速度は2.08×10-14mol・h-1・cell-1に達した. また, 単一連続槽型反応器における光バイオ脱硫法において, 溶存硫化水素の酸化速度に及ぼす操作変数 (希釈率, 供給液硫化水素濃度, 光強度) の影響を定量的に明らかにした. さらに, 直列連続槽型反応器に対するモデルシミュレーションを行い, 溶存硫化水素の酸化速度と反応器連結数の関係を定量的に把握した.