2005 年 59 巻 2 号 p. 131-137
海水濃縮液 (かん水) 中に含まれる主成分ナトリウムを連続的にモニタリングすることを目的として, 錯体系クロモイオノフォアのナトリウムによる分解反応に基づくフローインジェクション分析法について検討した, 錯体系クロモイオノフオア, ビス (1, 4, 7, 10, 13-ペンタオキサ-16-アザーシクロオクタデカン-N-カルボジチオ酸) コバルト (II)(Co-A18CC), は高濃度のナトリウムイオンの共存により, 極めて特異的に分解した. この分解反応は, 共存するナトリウムイオンの濃度が高いほど促進された. Co-A18CC溶液を試料流れに注入するリバースFIAを構築し, 321nmにおけるフローシグナルを記録した. ナトリウム濃度が0mol dm-3から5.0mol dm-3の範囲において, Co-A18CCの吸光度 (ピーク高さ) はナトリウム濃度の増加につれて直線的に減少する応答を示した. 海塩の無機成分として, 海塩に含有されているマグネシウムイオン, 硫酸イオン, 臭化物イオン及び炭酸イオンは, ナトリウムの5mol%共存しても, 定量を妨害しなかった. 本法により測定された市販食用塩中のナトリウムの含有量は, イオンクロマトグラフィー法やフレーム原子吸光法の測定結果と良く一致した. また, 測定値の相対標準偏差も4%以内と, 本法の再現性は良好であった.