日本原子力学会和文論文誌
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核融合炉用高熱伝導セラミックス製ダイバータプレートモデル試験体に関する基礎的研究
石山 新太郎
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2004 年 3 巻 3 号 p. 288-297

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抄録

現在,日本原子力研究所(以下,原研と称する)では,将来の4GW級核融合動力炉(A-SSTR II: AdvancedSteady State Tokamak Reactor II)の概念検討を進めている。この原子炉の特徴は,炉内ブランケット加熱部で1,073~1,173Kに加熱した冷却ヘリウムガスによるガスタービン発電システムにより50%の高効率発電を目指している点であり,このシステムにおけるブランケット圧力容器や壁の設計に耐熱性低放射材である炭化ケイ素材料(SiC)を採用している。
一方,現在稼働中の軽水炉型原子炉の将来における廃炉処理作業中に発生する放射化材料の処理処分問題は,今後,原子力を取り囲む大きな問題となる。そのため,動力炉への低放射化材料の積極的導入を図ることを目途に材料開発を進めることは極めて重要な研究開発課題の一つであり,このことは核融合動力炉についても例外ではない。
そのため,核融合動力炉の設計においては上記ブランケット構造のほかにも,現在,真空容器などの大型構造体用の高マンガン鋼やチタン合金などの低放射化材の研究開発などが積極的に進められている。また,さらにダイバータ構造体では,高温プラズマと直接接触することから炉内構造物で最も過酷な使用条件に晒されることから,上述の大型構造体中最も高い頻度で交換を要する機器である。2002年に工学設計を終了した国際核熱融合実験炉におけるダイバータ構造設計では,プラズマと直接接触する部位(ダイバータプレートと称す)は,2~15MW/mm2の高熱負荷を受けるため,高熱伝導性C/Cコンポジット製アーマータイル(炉心プラズマと直接接触するタイルで,熱伝導率≧60W/m・K(中性子照射による劣化を考慮)および強度≧500MPa)と,冷却チャンネルを有する銅合金製冷却基板をこのタイル受熱部裏側でろう接した構造となっているが,将来このダイバータプレートをすべてSiC化することができれば,低放射化とともにダイバータ構造体を軽量化することができ,この部位の補修/交換ならびにその保管が非常に容易になることが予想される。
しかしながら,そのためにまずアーマータイル部材料としては,高エネルギーイオン粒子照射によって生じる帯電による絶縁破壊や熱衝撃破壊に対する耐性が必要であることから,この部位には電気伝導性のほかに高温における強度・靭性に優れ,さらに熱伝導率の高いSiC材料が要求される。
次に,ターゲットプレートの冷却基板については,除熱のため冷却基板中に高圧冷却水を流すので高強度/高密度で,かつ銅合金なみの熱伝導性能を有する材料であることが要求される。
一方,ケイ素系材料の開発においては現在,次世代SST (Super Sonic Transport;超音速旅客機)やHST(Hyper Sonic Transport)の開発において従来のNi基超合金に変わり,比強度および耐熱性のさらに優れたMo-SiやNb-Siなどのシリサイドの研究開発が進められているが,比重差および融点差の問題から均一溶解の問題やケイ素の共有結合や結合力の異方性に起因した靭性の欠如が問題となっている。
そこで本研究では,炭化ケイ素ナノ粉末を添加した多結晶ケイ素マトリックス材Si/xSiC-MMC (Metal MatrixComposite)をアーマータイルとし,さらにこのタイルを高熱伝導性BeO添加SiC製の冷却基板にろう接して,試作したダイバータプレートに実機相当の高熱流束を負荷した場合のこの試作体の健全性および除熱性能に関して検討を行うことを目的とした。

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