日本原子力学会和文論文誌
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エネルギー問題に対して人々が抱く意識の分析
立地地域と都市地域における比較
高橋 玲子中込 良廣
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2004 年 3 巻 3 号 p. 298-306

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抄録

現代社会は「飽電の時代」にあるといわれているように,電力の消費地(都市地域)においては,人々は日常生活のなかで無意識のうちに豊富なエネルギーの恩恵に浴している。一方,遠隔の原子力発電所の所在地(立地地域)においては,交付金支給や雇用誘導などの利益がもたらされているが「迷惑施設」に対するNIMBY (Not In My BackYard)感情も発生している。結果として,電力の生産地である立地地域と消費地である都市地域の間には一種の「産消問題」が誘発され,これがわが国の原子力の推進計画にも少なからず影響を与えている。また,立地地域と都市地域の間には,原子力技術に対するリスク認知や原子力事業主体に対する信頼感に,さらに立地地域相互の間においても安全性などに対する認識に,それぞれ相違のあることが確認されている。
本稿では,このような地域における人々の意識の違いを解明するための一助として,複数の立地地域と都市地域を調査対象に選び,地域住民の意見を多面的な視点から比較した。これまで著者らは,新エネルギー(太陽光や風力など)に対する選好イメージ,政策への意見反映の考え,生活における価値観など心情的な要因が原子力利用に関する人々の意識に影響することを明らかにしている。今回の調査では,アンケート調査により上述の観点から個々の地域における意見の特徴を把握したうえで,これらの意見の背景をより明確にするために直接回答者に面接を行う訪問調査を実施し,これら2つの調査を通じてそれぞれの住民の持つ意識について分析を試みた。

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