抄録
セメント産業は代替原燃料として多種多様な廃棄物を利用しているが, 廃棄物は多くの塩素分を含有するため, その利用は種々の問題の原因となった. この問題を克服するため, 太平洋セメントは塩素バイパスシステムを開発し, 高塩素含有廃棄物の利用を可能にした. しかしながら, 近年, セメント製造プロセスでは廃棄物利用量の増加に伴う重金属, 特に鉛成分のインプット量の増加の問題が顕在化しており, 新たな対策技術が求められている.
種々の検討の結果, 我々は「塩素バイパスシステム」と, 「湿式プロセスによる鉛回収技術」を最適化することによる, 新しい効率的なセメント製造プロセスからの鉛回収技術を開発した. 本技術により, 非鉄精錬原料として利用可能な高純度の鉛を回収することができ, 鉛インプット量の増加に対応が可能となる. 本技術は, セメント製造プロセスにおける廃棄物利用の拡大による, 循環型社会の形成に貢献を図るものである.