抄録
転炉精錬における耐火物溶損を低減するには,MgOのスラグへの溶解機構を解明することが重要である。多くの場合,スラグとMgOの界面にはFeO-MgO層が生成するため,本研究では,このFeO-MgO固溶体のスラグへの溶解速度を,スラグ組成,固溶体組成を変化させて測定した。その結果,以下の知見を得た。(1)FeO-MgO固溶体は安定ではなくスラグに溶解する。その溶解速度はスラグ中FeO濃度が高いほど増加し,MgO濃度が高いほど低下した。(2)いずれの条件でも固溶体中のFeO濃度はバルクよりスラグ界面の方が高かった。(3)スラグ界面近傍の固溶体中FeO濃度と溶解速度の間には明瞭な関係があり,これが溶解速度を支配する重要な因子と考えられる。(4)スラグ界面近傍の固溶体とスラグバルク中のFeO活量の差と,固溶体中のスラグ界面近傍とバルクとのFeO濃度差の間には相関が見られた。