大気環境学会誌
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総説
リスク評価ツールとしての大気拡散モデルの開発
東野 晴行
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2009 年 44 巻 2 号 p. 59-66

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抄録

従来,化学物質の暴露およびリスクは,観測データのみに基づいて評価されていた。しかし,評価すべき物質の数が多く,対象となる地域が広い場合に,十分な空間解像度で暴露やリスクの評価を実施するには,莫大な費用と労力を要していた。そこで,著者らは,化学物質の大気中の濃度を,排出量と気象条件から計算するソフトウェアであるADMER(正式名称:産総研-曝露・リスク評価大気拡散モデルを開発した。
ADMERを利用することにより,評価可能な地域や物質の数が飛躍的に増加し,どのような発生源が高濃度・高リスクの要因となっているのか,定量的に評価できるようになった。また新規物質など観測データがない場合の推定,さらには将来と過去等の推定など,社会経済的評価に不可欠な要素を解析することも可能となった。
ADMERは操作が簡単で誰でも無償で入手できることに加え,日本においてPRTR(環境汚染物質排出移動登録)制度が施行され,化学物質のさまざまな排出量データが入手できるようになったことから,自治体や事業所などを中心にユーザーが年々増加しており,さまざまなところで大気系化学物質のリスク評価に利用されている。

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© 2009 社団法人 大気環境学会
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