大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
ノート
大気エアロゾル中PAHsの森林フィルター効果の観測~森林内外の地上大気濃度差の利用~
前島 幸司大河内 博稲津 晃司久松 由東原 宏
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 45 巻 1 号 p. 43-48

詳細
抄録

2005年9月から2006年8月までの1年間,東京都心から西約20 kmに位置する東京農工大学FM多摩丘陵 (森林面積 12 ha)の森林外部と森林内部で大気エアロゾルを採取し,7種類の粒子状PAHsの大気中濃度を測定した.SPMと同様に森林内部の大気エアロゾル中PAHs濃度(Cin)は森林外部の大気エアロゾル中PAHs濃度(Cout)よりも低く,森林樹冠によるPAHsの捕捉を示唆していた.ベンゾ[a]ピレンとペリレンを除いて,森林外部の大気エアロゾル中PAHs濃度(Cout)は森林外部と森林内部の大気エアロゾル中PAHsの濃度差 (Cout - Cin)と正の高い相関があった(r > 0.83).両者の最小二乗法によって計算した回帰直線の傾きは樹冠による捕捉率に相当するが,0.22(ピレン)から0.29(インデノ[1,2,3-c,d]ピレン)の範囲をとり,疎水性の指標を示すオクタノール水分配係数(Kow)とともに増加した.この結果から,疎水性の高いPAHsほど森林樹冠に捕捉されやすく,森林樹冠により大気エアロゾル中PAHsのうち最大で30 %程度が捕捉されているものと考えられた.

著者関連情報
© 2010 社団法人 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top