大気環境学会誌
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原著
北日本における亜硝酸ガス濃度と窒素酸化物由来成分の挙動
野口 泉林 健太郎加藤 拓紀山口 高志秋山 雅行大塚 英幸酒井 茂克高木 健太郎深澤 達矢柴田 英昭藤沼 康実三枝 信子下鳥 稔遠藤 朋美家合 浩明松田 和秀角皆 潤原 宏
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2010 年 45 巻 4 号 p. 153-165

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抄録

フィルターパック法または拡散デニューダ法を用いて札幌(都市地域),母子里(田園地域),利尻(遠隔地域,海岸部)および天塩(遠隔地域,山間部)において亜硝酸ガス(HONO)を含む各酸化態窒素の大気濃度を測定し,その挙動について考察した。HONO濃度は都市地域である札幌で最も高く,年平均濃度では他の地域の11~31倍を示した。HONO濃度は,都市地域では冬に,遠隔地域では夏に高く,田園地域では両方の特徴を示した。また環境大気中のHONO/NOx比はKurtenbach et al. (2001)による直接発生源のそれより大きく,大気中のHONOの生成には大気中粒子表面や地表面におけるNO2と水の不均一反応による二次生成の寄与が大きいと考えられた。地表面での不均一反応の場合,NO2の沈着により,HONOが放出されるため,HONOとNO2の濃度勾配には負の相関関係が見られるはずであるが,天塩ではHONOとNO2の高度別濃度差(30および10m)に正の相関関係が見られた。また利尻のHONOとPM10に有意な相関が認められ,また利尻および母子里のHONO/NO2と絶対湿度に有意な相関が認められた。このことから,NO2濃度が比較的低い田園および遠隔地域では大気中の粒子表面での不均一反応の寄与が大きいと考えられた。一方,都市部である札幌では地表面における二次生成の寄与は,特にNO2濃度の高い冬期に無視できない寄与があると考えられた。さらに冬期の札幌ではHONOおよびNOとHNO3およびO3は負の相関関係を示した。これはNO濃度が高い冬期の都市部ではO3濃度が低くなり,NO2からHNO3および粒子状硝酸塩への変換が進まないためと考えられた。このように,大気中のHONOの挙動は,大気中粒子表面や地表面におけるNO2と水の不均一反応による二次生成に支配されており,NO2濃度,大気中水分,O3濃度は,この不均一反応に大きな影響を及ぼすと考えられた。

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© 2010 社団法人 大気環境学会
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