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大気環境学会誌
Vol. 46 (2011) No. 1 P 20-29

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http://doi.org/10.11298/taiki.46.20

原著

本研究では,日本および近年大気汚染の著しい中国における大気中多環芳香族炭化水素(PAH)キノン濃度レベルを把握すること,さらに大気内動態を解明するための基礎的なデータを得ることを目的とし,PAHキノンの一種である1,2-benzanthraquinone(benz[a]anthracene-7,12-dione; BAQ)の実大気中観測,ならびに光やオゾンによるPAHの酸化反応によるBAQの生成を実験的に検討した。北京,大阪,輪島における実大気粒子中BAQ濃度を測定したところ,最も高かった北京・冬の濃度は,輪島・冬の濃度の約200倍高い値を示した。またBAQ/benzo[k]fluoranthene(BkF)濃度比を比較したところ,いずれの地点においても夏季のほうが冬季よりも低いという結果を得た。夏季には強い太陽光強度の影響により,BAQの光分解がBkFの光分解以上に促進され,BAQ/BkF比が小さくなったものと考えられた。北京で大規模な黄砂が観測された時期においては,黄砂のほとんど観測されなかった春季よりもBAQ/BkF比は高い値となった。室内反応実験により,中国砂漠土壌粒子表面に担持させたBaAからのBAQ生成を,光照射およびオゾンとの反応によって調べたところ,参照とするグラファイト粒子,およびテフロン粒子よりも土壌粒子表面において反応が促進される傾向があることがわかった。このことから,黄砂期にBAQ/BkF比が高くなる理由の一つとして,黄砂表面上におけるBAQの二次生成が示唆された。

Copyright © 2011 社団法人 大気環境学会

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