大気環境学会誌
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原著
高活性炭素繊維 (ACF) を用いた大気浄化技術
—I. ACFのNOX浄化特性と強制採気による大気浄化技術 —
下原 孝章新谷 俊二三苫 智子吉川 正晃北田 敏廣
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2011 年 46 巻 3 号 p. 187-195

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抄録

我々はACFの浄化特性を利用して,道路沿道のNOX濃度を主成分とする大気汚染物質を削減するシステムを検討している。我々が提案している大気浄化システムは大きく分けて2通りあるが,本報告 “I” では,送風機を用いて汚染空気をACF内に通気させることで,集中的に大気を浄化できる利点をもっている“強制採気式”の大気浄化システムに対する基礎実験を行い,特に,ACFのNO浄化特性を検討し,NO,NO2の効率的な同時浄化の実現を目指した。さらに,使用後ACFの再生技術について検討を行った。
円筒管内にPAN系ACFを充填し,野外でポンプにより道路沿道の汚染空気をACF内に通気させた。充填したACF量 (g) を採気流速 (mL/min) で割った量をW / F値 (g・min/mL) とし,W / F値を5.7 × 10-3~2.1 × 10-2の範囲で変化させながら円筒管前後のNOX濃度を連続に通年測定した。その結果,年平均のNOおよびNO2浄化率は,それぞれ,80.5%および90.2%であった。W / Fを1.0 × 10-2以上に設定することで,年間を通して送風機以外の大型の付帯設備なしに,ACF単独でNO,NO2の大部分を同時浄化できることが示唆された。本システムでは,道路沿道の数100 ppbのNOXを効率よく浄化できた。ACFの再生処理なしでも5年以上,メンテナンスフリーとして駆動させることが可能である計算値が得られた。
使用後ACFの簡易な再生技術について検討した。使用後ACFに対しては,簡易な通水洗浄によりACF内に捕捉された硝酸の60~70%を回収できた。また,通水洗浄ではNOXに対する浄化能力も60~80%程度,再生できることが分かった。簡易な水洗浄処理のみで,ACFのNOXの浄化能力は繰り返し再生が可能であった。

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© 2011 社団法人 大気環境学会
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