2012 年 47 巻 1 号 p. 18-25
東シナ海周辺のPAHs濃度、n-アルカン濃度における長距離輸送の影響を把握するために、2009年の春季および秋季に沖縄辺戸岬、福江島、福岡市の3地点でエアロゾルの集中観測を行った。測定物質は、PAHs類15 種と、n-アルカン類20 種である。Σアルカン濃度、ΣPAHs濃度は福岡がもっとも高濃度となり、次に福江が高かった。エイジングの指標であるBaP/BeP比から判断すると、辺戸、福江で観測された気塊は長距離輸送されてきたことを示唆していた。CPI値は福岡で1に近い値を示し、人為起源を示唆していた。福江と辺戸では高等植物のワックスなどの自然起源がアルカン類の多くを占めていた。後方流跡線解析に基づいて、福江に到達した気塊を中国、韓国/日本、太平洋の3つに分類した結果、ΣPAHs濃度は中国由来、韓国/日本由来、太平洋由来の順に高濃度となった。輸送されてくる気塊の通過地域によって、濃度が変化することが示唆される。PAHs濃度は先行研究とは異なり、秋季の方が春季よりも高濃度となった。これは、秋季に黄砂を伴う大規模気塊が飛来したこと、気塊の発生源に中国起源が多かったことが原因と考えられる。PAHsの異性体比IcdP/(IcdP+BghiP)、FLT/PYRを用いた排出源推定によると、春季の主要発生源は石油燃焼となり、秋季はバイオマス及び石炭燃焼となった。