大気環境学会誌
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原著
グリーン関数法を用いた一酸化炭素排出量の長期間逆推定
弓本 桂也鵜野 伊津志
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2012 年 47 巻 4 号 p. 162-172

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抄録

中国における一酸化炭素(CO)排出量に対して、グリーン関数法を応用した排出量逆推定を2005 - 2010年の6年間にわたって行った。拘束条件にはMOPITT衛星センサーで観測されたCOの鉛直プロファイルを、感度計算には全球化学輸送モデルGEOS-Chemのタグ付きシミュレーションを利用した。得られた排出量に対して、逆推定に用いていない独立な地上観測データを用いた検証を行った。逆推定結果は冬・春季に見られた過小評価や相関係数などの各種統計値を改善し、得られた排出量が妥当であることを確認した。逆推定結果を用いたモデル結果は、MOPITTによって観測されたCOの季節変動をよく再現した。特に、逆推定前は過小であった冬・春季における中国から東シナ海・日本列島への移流、春~秋季における中国中東部の高濃度COの再現性を大幅に改善した。逆推定によって得られた中国におけるCO排出量は冬~春季で最大、夏季に最小となるダイナミックな季節変動を見せた。春季は夏季に比べ50 %以上も排出量が増加した。この季節変動の傾向は、他研究による推定量とも一致した。中国CO排出量は2005年よりそれぞれ、164.5、171.5、180.8、160.3、152.5、156.1 Tg/yearと逆推定された。2005 - 2007年と増加し、2007年をピークに2年連続で減少し、2010年は増加に転じた。これは北京オリンピックによる排ガス規制や世界的景気後退の影響を受けたためだと考えられる。本研究で得られた排出量は、先行研究で得られた推定量とも4 %以内の差で一致した。

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© 2012 社団法人 大気環境学会
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