大気環境学会誌
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原著
エアロゾル質量分析計により沖縄県辺戸岬において観測されたエアロゾル化学組成の特徴
三好 猛雄高見 昭憲下野 彰夫畠山 史郎
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2013 年 48 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

沖縄県辺戸岬において、2003 10 月から2004 7月にかけて、エアロゾル質量分析計による大気エアロゾルの化学組成(対象とした成分は、アンモニウム、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、有機物)および粒径分布の観測を行った。化学組成については、期間を通して硫酸塩濃度が最も高く、全期間の平均で3.8 µgm-3であった。また、粒径分布はすべての成分で類似しており、500 600nm付近にピークがあった。バックトラジェクトリー解析を用いて、データを観測ステーションに到達した気塊の起源により、10 のグループに分類した(太平洋、日本、朝鮮半島、中国北部、中国南部およびそれらの境界地域)。大陸由来の気塊が来るとき濃度が高く(各成分の質量濃度の合計で5.010.9 µgm-3)、太平洋由来の気塊が来るとき低かった(2.5 µgm-3)。さらに、バックトラジェクトリー解析の結果に基づいて、五つの季節(秋季、冬季、春季、夏季前半、夏季後半)にデータを分類し、エアロゾル中の各成分の季節変動を調べた。冬季における中国北部由来の気塊を対象として、気塊の観測ステーションまでの輸送時間と相対湿度を求めた。これらとエアロゾル化学組成との関係を調べることで、輸送中のエアロゾルの変質について考察した。SO2の硫酸塩への時間変換率を求めたところ、相対湿度50%未満では 1.6h-175%以上では 6.5h-1となり、高湿度条件下では SO2 から硫酸塩への変換が速やかに進むことがわかった。これは、SO2 の硫酸塩への変換が気相反応だけでなく、雲や霧粒子との不均一反応や液相反応により進んでいることを示唆している。

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© 2013 社団法人 大気環境学会
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