大気環境学会誌
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技術調査報告
2009~2011 年における立山地域での大気中揮発性有機化合物(VOCs)の調査
鳥山 成一溝口 俊明近藤 隆之木戸 瑞佳中谷 訓幸田中 敦西川 雅高
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2013 年 48 巻 1 号 p. 49-64

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抄録

立山地域の標高2,450mの立山室堂と標高1,180mの立山ゴンドラにおいて大気サンプルを採取し、VOCs30成分を測定して解析を行った。採取期間は2009 年8月中旬~10 月末、2010 年5月初旬~10 月末、および 2011 年5月初旬~10 月末であり、両地点での採取回数はそれぞれ165回、171 回であった。VOCs30 成分の年度別平均値では、2009 年度から2011年度にかけて低くなる傾向を示し、少しきれいな環境になっていることが示された。VOCs30 成分中比較的高い濃度を示したものは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、p-ジクロロベンゼンであった。後方流跡線解析から発生源地域を分類したところ、東アジア由来が立山室堂で 64%、ゴンドラで 38%を占めた。月別では、夏季には、ベンゼンの濃度が低く、同時に東アジア由来の割合が少ない傾向が見られ、ベンゼン濃度は東アジア由来と連動していると考えられる。両地点での濃度は、都市部と比べるとクロロホルムが同等である以外は、全ての成分で低く、かつ、沖縄県辺戸岬とはほぼ同程度であった。山岳地帯との比較では、両地点でのベンゼンとトルエンの濃度がスイスのユグフラウヨッホよりわずかに高かった。ベンゼン/トルエン比が東アジア由来の指標となることは、この3年間の両地点でのデータでも確認された。

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© 2013 社団法人 大気環境学会
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