大気環境学会誌
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技術調査報告
九州中部の山岳における光化学オキシダント濃度の挙動および高濃度要因について
村岡 俊彦林 英明豊永 悟史北岡 宏道
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2013 年 48 巻 2 号 p. 101-109

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抄録

光化学オキシダント(以下「Ox」)濃度上昇要因とされている大陸越境移流,地域内汚染および成層圏オゾン沈降について,その各寄与の程度を観測により見積もることを目的として,2011 年度に九州中部に位置する標高930 mの阿蘇カルデラの外輪山にて自動計測器によりOx 濃度を通年観測した。Ox 濃度の平均日変化の振幅は小さく、夜間に観測されるOx 濃度は,バックグラウンドOx とみなされた。春季は,地上局と外輪山が,日中ほぼ同じ濃度レベルとなっていたことから,平均的に見れば,この時期は,上層のバックグラウンドOx 気塊が,鉛直混合により,日中の地表Ox 濃度レベルを主に決定しているものと推測された。外輪山の平均日変化の振幅より,日中最大濃度に対する地域内Ox 平均生成量の寄与割合を見積もったところ,夏季を除けば,その影響は平均的には10 %以下であった。ただし,個別の高濃度事例で見れば,大陸越境移流時においても 20 ppb を超える地域内Ox 生成の寄与もあり得る可能性が見られた。春季のOx 日平均値に対して,比湿および硫酸塩濃度を変数とする重相関分析を行ったところ,この時期のバックグラウンドOx 濃度は,成層圏オゾン沈降分をベースに、大陸越境移流分が上乗せされたものと考えられた。

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© 2013 社団法人 大気環境学会
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