2013 年 48 巻 3 号 p. 145-153
近年の自動車からの大気汚染物質の排出実態を把握し、自動車規制の変遷に伴う排出実態の変化を評価するため、2010 年に都心の自動車トンネルを利用して自動車排出ガス調査を実施した。調査したトンネルにおける平均交通量は約1500 vehicles h-1、ディーゼル車両率は平日29%、週末18%だった。大気汚染物質のトンネル入口と出口の濃度差を測定し、風速などを考慮して、ガソリン車とディーゼル車別にVOC46 成分、NOX、PM2.5 の排出係数を算出した。ガソリン車について算出したVOC の排出係数は、アルカン類と芳香族類の割合が高く(それぞれ43%と 42%)、最も排出係数の大きいVOC 成分はトルエン(13 mg vehicle-1 km-1)であった。ディーゼル車について算出したVOC の排出係数は、アルケン類とアルデヒド類の割合が高く(それぞれ39%と37%)、最も排出係数の大きい成分はホルムアルデヒド(14 mg vehicle-1 km-1)であった。2001 年に同一のトンネルで行った調査と比較すると、ガソリン車およびディーゼル車のVOC の排出係数の総和は、それぞれ38%、49%低減していた。 自動車の単体規制やディーゼル車の走行規制の効果が表れていたと考えられる。