大気環境学会誌
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原著
葉に発現する可視被害の程度に基づいたホウレンソウのオゾン感受性評価
印南 ゆかり三輪 誠
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2014 年 49 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

埼玉県のホウレンソウの生産現場では、春季の比較的高い濃度のオゾンの影響により葉に可視被害が顕在化し、問題となっている。本研究では、オゾンに強いホウレンソウの品種を選抜するとともに、オゾン感受性を推測するための指標と、春季に生じるオゾン被害の原因について検討した。オゾンに強いホウレンソウの品種を選抜するため、野外にあるガラス室内で時期を変えてプランター栽培したホウレンソウ(24品種)に、120 ppbのオゾンを、1日あたり5時間、3日間にわたって人工的に暴露した。葉に発現した可視被害の程度に基づき、品種間のオゾン感受性差異を評価した結果、感受性が低く可視被害が発現しにくい品種が選抜できた。一方、オゾン被害度と気孔密度との間には高い正の相関が認められ、気孔密度の高い品種ほどオゾン感受性が高く、葉に被害が発現しやすいことがわかった。また、いずれの品種においても、気孔密度が春季に高くなり、オゾン被害度も同時期に高くなる傾向を示した。オゾン被害度と気孔密度との相関も、この時期により強くなる傾向にあった。これらのことから、春季に栽培されたホウレンソウの気孔密度が、オゾン感受性を推測するための指標となり得ると考えられた。一方、圃場で栽培したホウレンソウでも、気孔密度が春季に高くなった。このことから、春季にオゾンによる被害の報告が多くなることの一因として、大気中のオゾン濃度が上昇する春季に、ホウレンソウの気孔密度が高くなり、オゾン感受性が高まったことが考えられた。

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© 2014 大気環境学会
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