大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
原著
東京都心部における大気エアロゾル中水溶性フミン様物質の動態と起源の推定
山之越 恵理大河内 博緒方 裕子小林 由典
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 49 巻 1 号 p. 43-52

詳細
抄録

2012年3月、5月、7月、10月、12月に各1週間程度、東京都新宿区に位置する早稲田大学西早稲田キャンパスで、大気エアロゾル中フミン様物質(HULIS)の定量を行った。試料はハイボリウムエアサンプラーにて昼夜12時間ごと(6 : 00~18 : 00、18 : 00~6 : 00)に行い、DEAE-UV法でHULISをフミン酸、フルボ酸分画に分けて分析した。HULIS濃度は夏季に低く、秋季と冬季に高いという季節変化を示し、季節によらずHULIS中90%をフルボ酸が占めていることが分かった。年間を通じて、HULIS濃度はNO2、CO濃度と比較的高い正の相関が見られたことから、東京都心部の新宿におけるHULISは自動車などの燃焼起源から主に排出されていることが示唆された。フミン酸、フルボ酸を比較すると、フルボ酸はフミン酸より濃度変動が大きいことから、フミン酸はより安定な構造を持っていることが示唆された。加えて、フルボ酸はより人為起源の影響を受けやすいことがわかった。また、夏季にはOXと同様の昼夜変動を示し、一次生成以外に二次生成の影響がみられた。秋季には、バイオマス燃焼起源の指標であるレボグルコサン濃度が高く、HULIS濃度とも正の高い相関が見られることから(r=0.867)、秋季におけるHULIS濃度の増加はバイオマス燃焼の影響によるものと考えられた。

著者関連情報
© 2014 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top