大気環境学会誌
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技術調査報告
広島県極楽寺山の森林地域における露の化学組成とOHラジカル生成能の推定
三宅 隆之新垣 雄光佐久川 弘
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2014 年 49 巻 3 号 p. 157-166

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抄録

広島県極楽寺山の森林地域の衰退地と非衰退地で、フッ素樹脂製シート上に濃集する露を採取し、化学成分の測定と比較を行った。露水中化学成分は、衰退地の試料では亜硝酸、ギ酸、PO43-、NO3-、SO42-、NH4+の濃度が特に高かった。一方土壌起源とされるCa2+、Fe、Alは、非衰退地と衰退地間で濃度差は小さく、沈着量は非衰退地の方が高かった。また全般に極楽寺山の露水中化学成分濃度は、他の報告にある都市地域や森林地域の露水と比べ、平均濃度は1~2桁ほど低かった。露水中成分の酸性・塩基性物質の割合を比較すると、衰退地の方が、亜硝酸に加え、NH4+の寄与も大きかった。これらのことから衰退地の露水は、人為活動の影響をより強く反映していた。さらに亜硝酸、NO3-、H2O2濃度を基にOHラジカルの光化学的生成速度を計算した結果、衰退地で0.25 μM h-1、非衰退地で0.023 μM h-1と衰退地で約10倍速かった。しかしそれらは、報告されたアカマツ針葉上の露水の実測値と比較して6~32倍も遅く、針葉上に蓄積した乾性沈着物のOHラジカル生成速度の加速への大きな寄与が示唆された。

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© 2014 大気環境学会
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