大気環境学会誌
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技術調査報告
福岡県における湿性沈着量の経年変化 (1995~2011)
大石 興弘濱村 研吾藤川 和浩村野 健太郎
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2014 年 49 巻 4 号 p. 198-206

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抄録

福岡県(福岡県保健環境研究所)における1995年度から2011年度までの17年間の湿性沈着の分析結果を基に経年変化を検討した。pHの全平均値は4.68で、やや低下傾向にあったが、ここ数年横ばい状態にある。初期酸度を示すpAi=-log (nss-SO42-+NO3-) はpH同様低下傾向にあったが、最近やや高くなる傾向にある。主な成分であるnss-SO42-、NO3-、NH4+、nss-Ca2+濃度はいずれも参照値(全環研協議会酸性雨全国調査結果2003~2008年度の平均値) より高い値であり、沈着量も同様であった。成分組成では、秋期、冬期は海塩の割合が大きいが、春期、夏期は小さかった。春期、夏期の非海塩由来成分ではnss-SO42-が陰イオンの約50%、NO3-が約25%を、陽イオンではH+、NH4+、nss-Ca2+がそれぞれ20~30%を占めた。各成分沈着量の季節別経年変化について、nss-SO42-沈着量は各季節共に2000年度前後にやや減少しそれ以後増加傾向を示すが、2008年度前後から減少に転じる傾向が見られた。特にこの傾向は冬期に見られ、中国のSO2の排出量の経年変化に類似していることから、これを反映している可能性が考えられた。NO3-もほぼ同様の経年変化を示すが、NO3-/nss-SO42-比は高くなる傾向にあり、冬期に顕著であった。 NH4+ の沈着量はやや減少傾向にあるが、nss-Ca2+の沈着量は2000年代半ば以降、春期にやや高い値となっており、nss-Ca2+/NH4+比は0.4を超える値で推移していた。最近、pHは低下傾向から横ばいとなり、nss-SO42-の湿性沈着量も減少傾向が見られており、東アジアから九州北部への移流影響は減じていることが推測される。

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© 2014 大気環境学会
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