大気環境学会誌
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技術調査報告
ベイズ統計を用いたPM2.5常時監視データの解析
久恒 邦裕山神 真紀子
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キーワード: Bayes, CAR model, PM2.5, spatial statistics
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2015 年 50 巻 2 号 p. 107-116

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抄録

PM2.5の環境基準が定められ、各地で常時監視体制が整い多地点のデータを得ることが容易になりつつある。しかし、平均値などを比較しただけではそれぞれの測定地点の特徴を明確にとらえることは難しい。そこで今回、愛知県、岐阜県および三重県の測定局を対象にして、ベイズ統計を用いた条件付き自己回帰モデルにより常時監視データの解析を行った。PM2.5濃度の観測値を、全域に共通した月ごとの影響、0.1°×0.1°で区切られた領域的な影響と測定局ごとの影響の3つに分けて、それぞれ定量的に推定した。領域的な影響は、名古屋港を中心とする愛知県西部や三重県北部において高くなる傾向が、愛知県東部や岐阜県では低くなる傾向が示された。また、それら領域的な影響を排除した測定局ごとの影響についても示し、影響の割合を定量的に評価することが可能となった。ベイズ統計による地理的特徴の結果は、空間自己相関の指標であるLocal Moran's Iや、Conditional Probability Function (CPF) 解析の結果との整合性が確認された。また、領域的な影響と測定局ごとの影響の合計は、全域に共通した月ごとの影響に対して最大で1.50倍になり、逆に低い場合には0.67倍の値になった。観測値と、得られた3つの影響の推定値から計算した濃度の予測範囲を比較すると、観測値のほとんどが予測範囲の中に収まった。大量の極端な値や欠測がある場合には、一部で観測値が予測範囲を超えた。

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© 2015 大気環境学会
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