大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
トレーサー法を用いたわが国の硫酸塩濃度に対する国内外の発生源寄与評価
板橋 秀一速水 洋
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2015 年 50 巻 3 号 p. 138-151

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抄録

微小粒子状物質(PM2.5)の主要成分の1つである非海塩起源硫酸塩(nss-SO42-)について、前駆体である二酸化硫黄(SO2)までを含めて、わが国における国内外の発生源寄与を包括的に評価した。対象とした発生源は中国、韓国、日本の人為起源および火山由来の自然起源である。発生源寄与の季節変動について評価を行うため、2005年1、4、7、10月について、36 kmの水平解像度を有する数値モデルで計算を行い、数値モデルはSO2とnss-SO42-ともに観測値と比較して良好な再現性を有することを確認した。トレーサー法を用いて発生源寄与を推定した結果、わが国においては、SO2は季節を通じて自国の寄与が支配的(各季の平均値で1.00 ppbv、相対比では66.3%)であり、一方でnss-SO42-は季節を通じて中国の寄与が支配的(各季の平均値で2.22 μg/m3、相対比では50.6%)であることが示された。火山由来の自然起源の寄与は、春季と秋季には日本の人為起源の寄与を上回る結果となった。SO2は自国の寄与が支配的であるが、その濃度は桁違いで大陸よりも小さいため、二次生成するnss-SO42-については、夏季には中国でほぼすべて(95%以上)が粒子化したうえで、夏季以外には輸送される過程で粒子化しながら、わが国のnss-SO42-濃度に影響を及ぼしていることを明らかとした。

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© 2015 大気環境学会
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