大気環境学会誌
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研究論文(技術調査報告)
PM2.5の酸分解/誘導結合プラズマ質量分析法によるケイ素を含む30元素一斉分析
辻本 浩子山岡 純子仲地 史裕川中 洋平
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2015 年 50 巻 4 号 p. 192-198

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抄録

大気中微小粒子状物質 (PM2.5) の酸分解/誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS) 法の酸分解および測定方法について変更を行うことで、従来一斉分析が困難であったケイ素 (Si) を含む無機30元素の一斉分析法の開発を試みた。硝酸、フッ化水素酸および過酸化水素を用いた従来の酸分解法では、開放系で行う加熱濃縮の工程で分解液中のSiが四フッ化ケイ素として揮散してしまう。そこで本法では、マイクロ波による密閉加圧分解した試料を、加熱濃縮を行わずに耐フッ化水素酸仕様のICP-MS測定に供することで、測定対象元素の溶解を十分に確保しながらSiの損失をおさえることに成功した。本法における対象30元素の添加回収率は96.0~110%であり、操作中に損失がないことを確認した。本法を都市大気粉塵 (NIES CRM No. 28) およびPM2.5の認証標準物質 (NIST SRM2783) に適用した結果、測定値/保証値の比はNIES CRM No. 28で0.92~1.10 (Si:0.96)、NIST SRM2783で0.80~1.21 (Si:1.02) であり、よい一致がみられた。本法は、PM2.5の環境基準と同程度の粉塵量に対してSiの揮散のない分解が可能であり、かつ従来法よりも前処理操作を短縮できることから、PM2.5の無機30元素一斉分析法として十分に実用性を有する定量法である。

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© 2015 大気環境学会
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