大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
2010年度を対象としたトレーサー法によるわが国の微小粒子状物質(PM2.5)の発生源寄与評価
板橋 秀一速水 洋
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2016 年 51 巻 5 号 p. 197-217

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抄録

領域化学物質輸送モデルに適用したトレーサー法を用いて、2010年度を対象にわが国の微小粒子状物質(PM2.5)の発生源寄与を評価した。最新の排出量インベントリや文献等から2010年度を対象とした発生源データを構築した。国内の人為起源発生源を種別に10区分、国外の人為起源発生源を領域別に中国、韓国、その他の領域とし、船舶、自然起源の計15区分を発生源寄与評価の対象とした。月別無機イオン成分濃度、季節別PM2.5成分濃度、日別PM2.5濃度の観測データを用い、モデル再現性を統計解析の指標から検証し、発生源寄与評価への適用に十分な再現性を有することを確認した。わが国における発生源寄与評価の結果、年平均の日本全域のPM2.5濃度に対し、国内の寄与が3.60 μg/m3(相対比で33.9%)と最大で、中国の寄与は3.10 μg/m3(同29.2%)であった。国内の寄与の内訳は自動車(同7.4%)、製造業(同7.0%)、家畜(同5.5%)、その他の国内発生源(同5.4%)、肥料施肥(同2.8%)、以下、電気業、機械、業務、廃棄物処理(同1–2%前後)であった。さらに、長期基準と短期基準の達成・非達成局別に発生源寄与を評価し、非達成の要因を地域別に評価した。九州域においては特に短期基準非達成の要因として国外の強い影響が懸念されること、瀬戸内では製造業と船舶、近畿ではこれに加えて自動車の寄与が大きいこと、関東では短期基準非達成の要因には自動車と製造業の寄与が大きいが、長期基準の点からは自動車が重要な発生源であることなどが明らかとされた。

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© 2016 大気環境学会
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