大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
日本で捕集した典型的な黄砂エアロゾルの化学組成
西川 雅高 早崎 将光森 育子大西 薫清水 厚日下部 正和
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2016 年 51 巻 5 号 p. 218-229

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抄録

日本に飛来した黄砂エアロゾルの化学組成には、発生源土壌由来成分と輸送過程で付加した化学成分が反映されている。本研究は、黄砂エアロゾル試料の多成分分析結果を基に、黄砂飛来判定に有用な特徴的成分を明らかにすることを目的とした。その成果は、輸送過程中に黄砂粒子に付加する成分の特定や挙動解析にも役立つはずである。2001年以降、ハイボリュームサンプラーで黄砂現象中に大気粉じんを捕集してきた。黄砂以外の発生源寄与を小さくするために、大気中の粉じん濃度が200 μg/m3/日以上であった典型的黄砂事例 (16事例、以降大黄砂と呼ぶ) を解析対象にした。元素濃度比の考察から、大黄砂に含まれていた15元素 (Al, Ba, Ca, Cr, Fe, K, La, Mg, Mn, Na, Ni, P, Sr, Ti, V) は土壌起源系元素であることがわかった。これらの元素濃度は大気粉じん濃度と明瞭な相関関係 (r>0.7) を示した。特に、Fe、Mn、BaのAl相対濃度比の相対標準偏差は10%以下であり、黄砂発生源に寄らず一定の組成比を示した。それに対し、SO42-、NO3、Zn、Pbの4成分については、成分間の相関係数が0.7以上と大きかったが、粉じん濃度との相関関係は認められなかった。これら4成分が低濃度である黄砂事例は、大略、中国沿岸部上空を通過するときの後方流跡線の最低高度が高い傾向が見られた。

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© 2016 大気環境学会
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