大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(原著論文)
緩和渦集積法を用いたPM2.5フラックス観測による東京郊外の森林における硫酸塩および硝酸塩の沈着速度
本庄 孝明高橋 章松田 和秀
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 51 巻 6 号 p. 257-265

詳細
抄録

PM2.5の森林への乾性沈着メカニズムを解明することを目的として、東京郊外の森林においてPM2.5中のSO42-およびNO3の乾性沈着フラックスを測定し、両成分の沈着速度を求めた。大気微量成分のフラックス直接測定手法の一つである緩和渦集積法を用い、2014年9月から2015年8月の期間の着葉時期に計4回、それぞれ約1週間の集中観測を実施し、昼夜間別の沈着速度を得た。緩和渦集積法によるサンプリングに同期して、林上2高度におけるSO42-およびNO3の濃度勾配も測定した。NO3の平均沈着速度はすべての観測期間でSO42-のそれよりも大きかった。全有効データの沈着速度の中央値は、0.19 cm/s (SO42-) および1.4 cm/s (NO3) であった。また、林上の2高度間における下方向への濃度減衰率は、SO42-よりもNO3の方が大きく、濃度勾配からも緩和渦集積法による沈着速度の成分間差と整合性のある結果が得られた。全観測期間の日中において、樹冠直上 (高度20 m) の気温が高度30 mの気温よりも高くなる傾向が見られ、さらに、その気温上昇率の増加に伴い、NO3の沈着速度が大きくなる傾向が見られた。これらの結果より、半揮発性であるNH4NO3粒子が、樹冠直上における気温の上昇に伴い揮発することで樹冠直上のNO3濃度が減少して濃度減衰率が大きくなることにより、NO3の沈着速度が増大した可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2016 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top