大気環境学会誌
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総説
大気中PM2.5のレボグルコサン測定研究の動向―植物燃焼指標物質の測定と輸送過程における変質プロセスの解明に向けて―
萩野 浩之
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2019 年 54 巻 1 号 p. 18-27

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抄録

大気中の微小粒子状物質(PM2.5)は主要な大気汚染物質の一つであり、大まかな化学組成や大気中での動態研究は数多くなされている。しかし、PM2.5は時間や地域(空間)の濃度変動が極めて高く、PM2.5に含まれる有機成分は複数の化合物から構成されるため、大気中での動態や発生源に関する知見は充分とはいえない。健康影響だけでなく地球規模での気候変動などへの影響を知るために、発生源や濃度変動を正確に把握することが世界共通の研究課題となっている。PM2.5の化学特性の解明を目的として、粒子組成を測定する研究を開始した。植物燃焼起源の指標物質であるレボグルコサンは、都市近郊大気において、単一の有機成分として珍しく高い濃度で観測された。本研究が行われた頃の大気環境行政は、ダイオキシンや自動車排出ガスに注目しており、規制が進められていた。このような社会動向に反して、本研究で都市近郊大気であっても植物燃焼起源の寄与が無視できないことを明らかにし、大気中PM2.5の化学特性を解明する重要性を示した。本稿では、レボグルコサンに着目し、これまでに行われている大気中PM2.5に関する研究を総説し、大気濃度の動態と化学変化に関する研究の今後の展望について言及する。

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© 2019 大気環境学会
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