大気環境学会誌
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研究論文(技術調査報告)
大気質モデルによるPM2.5硝酸塩の再現性向上を目的としたアンモニア排出量の更新
伊藤 美羽 櫻井 達也森川 多津子茶谷 聡
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2020 年 55 巻 4 号 p. 159-168

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抄録

不確実性が指摘されているNH3排出量を更新し、NH3濃度およびPM2.5中無機イオン成分濃度を対象に大気質モデルの再現性検証を実施した。NH3排出量の更新はEAGrid2010-Japanを対象に行った。まず農畜産起源排出量について、家畜業におけるNH3排出量から「堆肥施肥後の土壌からの揮散」を分離し、化学肥料施肥と合算したものに国内の施肥時期を考慮した月変動係数を適用した。続いて人・ペット由来のNH3排出量について、人口分布等の活動量を年次更新するとともに、人の発汗・呼吸、ならびにペット犬に係る排出係数を更新した。大気質モデルの再現性は2015年度の関東地域を対象に、複数の排出ケースに基づく感度解析から評価した。結果、農畜産起源排出量の更新により、農畜産域(神奈川県平塚市および群馬県前橋市)において暖候期のNH3濃度に対するモデル過大評価が改善した。さらに、人・ペットによるNH3排出量の更新により、都市郊外域(東京都狛江市および日野市)において同様に暖候期のモデル過大評価が改善した。PM2.5中無機イオン成分濃度では、人・ペット由来のNH3排出量を削減することで、特に暖候期におけるPM2.5中NO3成分の過大評価が関東の広範囲において改善した。

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