大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
富士山体を用いた夏季自由対流圏における雲水中揮発性有機化合物の観測
山脇 拓実大河内 博山本 修司山之越 恵理島田 幸治郎緒方 裕子勝見 尚也皆巳 幸也加藤 俊吾三浦 和彦戸田 敬和田 龍一竹内 政樹小林 拓土器屋 由紀子畠山 史郎
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2020 年 55 巻 5 号 p. 191-203

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抄録

2010年から2018年までの7月と8月に富士山頂(標高3,776 m)で大気および雲水を採取して、27種類の人為起源揮発性有機化合物 (AVOCs) (塩素化炭化水素16種、単環芳香族炭化水素8種、二環芳香族炭化水素3種)と6種類の生物起源揮発性有機化合物を分析した。雲水中VOCs (体積加重平均VOCs濃度:2.07 nM、n=159)の約9割はAVOCsであり、主成分はトルエンであった。これは富士山頂における大気中トルエン濃度が高いことを反映していた。雲水中AVOCs濃度は空気塊が大陸南部から輸送されたときに高く、最低濃度を示した海洋由来時の約1.5倍であった。雲水中トルエン濃度は総無機イオンの低下とともに指数関数的に減少した。雲水中クロロホルム、o-キシレン、リモネン濃度は大気中濃度とヘンリー定数から求めた計算値に比べて実測値は数倍高く、ヘンリー則からの予測値以上に濃縮されていた。疎水性が高いVOCsほど雲水に高濃縮されており、自由対流圏における雲水でもHULIS (フミン様物質)のような界面活性物質がVOCsの高濃縮に関与していることが示唆された。

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© 2020 大気環境学会
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