大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(技術調査報告)
地方自治体におけるPM2.5常時監視ネットワークの効率化の検討(II)―最適解の探索手法の構築―
豊永 悟史 古澤 尚英小原 大翼荒木 真山本 裕典矢野 弘道山崎 文雅
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 57 巻 3 号 p. 77-89

詳細
抄録

大気汚染物質の常時監視を適切かつ効率的に行うことは、それを担う都道府県等にとって重要な課題である。本研究では、PM2.5を対象として、測定局数を減少させた場合に環境基準の評価に与える影響を把握し、最適な効率化配置を探索する手法を開発した。本手法は、次の3ステップで構成される。ステップ1では、既存の測定局配置(既存ネットワーク)と測定局数を減らした後の配置(サブネットワーク)について、前報で示したRegression Kriging法(RK法)による空間濃度分布の予測を行う。この結果に統計検定を適用し、環境基準の評価対象である年平均値等の空間分布に有意差が生じないサブネットワークを抽出する。ステップ2では、ステップ1で抽出されたサブネットワークについて、既存ネットワークから予測される空間濃度分布と比較した場合に、閾値を超える濃度差が生じる陸地面積に基づく指標値を算出した。この指標値が最小となるサブネットワークが最適解となる。ステップ3では、最適解でのRK法の予測結果を、予測に用いていない実測値と比較することで、最適解の妥当性を評価する。この手法を熊本県の実測データに適用したところ、現状より5局少ないサブネットワークにおける最適解が得られ、その妥当性も確認された。本手法は大気汚染常時監視の実務を担う都道府県等で活用可能な手法の一つとなることが期待される。

著者関連情報
© 2022 公益社団法人大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top