大気汚染学会誌
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自動車からの多環芳香族炭化水素排出の主要因
半田 隆山村 発樹加藤 義洋斉藤 昭一郎石井 忠浩
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1979 年 14 巻 11-12 号 p. 464-473

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抄録
本論述は,一般に使用されているガンリンエンジン自動車からの多環芳香族炭化水素(PAH)排出の主要因について調べたものである。
ガソリンエンジン車からのPAH排出には,ガソリン由来のものと,エンジンオイル由来のものがある。前者としては,ガソリン中のPAH,ガソリンからの生成PAHの寄与が考えられ,後者としては,オイル中に蓄積したPAH,消費オイルからの生成PAHの寄与が考えられた。
ガソリン中のPAHは,その1-2%程度が燃焼過程を生き残り,排気ガスと共に排出された。又,ガソリンからのPAH生成量は,1l当りおよそ次の様に推定された。BaP1μg,BaA5μg,クリセン5μg,ピレン24μg。エンジンオイル中へのPAHの蓄積は,市中走行条件では,大部分がガソリン中のPAHに起因し,その蓄積量はオイル使用距離に比例して増加した。この蓄積PAHは消費オイルと共に排出された。そして消費オイルの増加は,そのオイルからの生成PAHの増加をも伴って,PAEの高い排出を引き起した。
通常使用されているガソリン車について,平均的にみると,BaP,BaA,クリセンの排出の60%以上は,消費オイルからの生成によった。以下,他の要因からの寄与は,ガソリン中のもの,ガソリンからの生成,オイル中のもの,の順に減少した。特に,ピレンの排出に関しては,ガソリン中の濃度が非常に高い為,ガソリン中のピレンからの寄与が4696を占め,主要因であった。以下,消費オイルからの生成,オイル中のピレン,ガソリンからの生成の順に排出への寄与は減少した。
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