大気汚染学会誌
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降雨による粒子状物質の洗浄作用
長期湿性沈着量の推定モデル
藤田 慎一
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1988 年 23 巻 6 号 p. 335-341

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抄録

ガス状・粒子状物質の長期湿性沈着量の推定モデルを導出し, 発生源の周辺における煤塵の沈着量を調べた。気象条件や粒径分布の設定値が, 沈着量の推定値に及ぼす影響についても検討を加えた。
点源から大気中へ放出された粒子状物質の積算沈着量は, 無限遠で発生量に漸近するが, そのパタンは粒子の粒径によって異なる。ミクロン領域でも粒径が小さな粒子の沈着量の分布パタンは, 風向の出現頻度と比較的類似した分布パタンを示す。これに対して粒径が大きな粒子の沈着量の分布パタンは, 風速や発生源からの距離にも依存する。サブミクロン~ミクロン領域に分布を持つ煤塵の沈着量は, 発生源の周辺では粒径が大きな粒子に, 遠方では粒径が小さな粒子の挙動に支配される。このため重量を基準にした降水中の煤塵の粒径モードは, 発生源からの距離とともに粒径が小さな方へ遷移する。
風系や降雨の統計データを用いると, 直接, 沈着量が推定できるため, このモデルは年~経年の長時間スケールにわたる湿性沈着量を推定するのに適している。沈着量を推定するうえでは, 気象条件とともに洗浄係数-つまり煤塵の粒径分布-を吟味することが, より重要な問題となる。

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