大気汚染学会誌
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小児期の呼吸機能の, 個人間, 個人内変動の推定
4年間の追跡の縦断解析
中館 俊夫香川 順外山 敏夫
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1991 年 26 巻 5 号 p. 333-339

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抄録
小児の努力性肺活量 (FVC), 一秒量 (FEVI), 50%, および25%肺活量位の最大呼気流速 (Vmax50, Vmax25) を, 小学校第4学年と中学校第2学年の間に2年毎に3回測定し, その追跡期間中の被検者間, および被検者内の変動の大きさを推定した。初回の調査対象者は, 217人の男子と224人の女子であった。このうち3回の調査ともacceptableな測定結果が得られた173人の男子と171人の女子について解析を行った。
2つの簡潔な線型モデルによって呼吸機能測定値の分布をよく説明することができた。これらのモデルの決定係数はFVC, FEV1で0.95以上, Vmax50, Vmax25で0.85以上であった, 推定された被検者間の変動は, 男女とも被検者内の変動の2-4倍であった。また縦断的に推定されたこれらの変動の和は断面的に推定された誤差分散とほぼ同等であった。これらの結果は, 短期間の繰り返し測定で認められる個人内変動と個人間変動の比較的大きな差が, 発育途上の小児の4年間の追跡においても認められることを示しており, 呼吸機能の正常な発達や呼吸機能の発達過程に影響し得る大気汚染物質などの危険因子を研究する際, 繰り返し測定の縦断的解析が一回の検査の断面的な解析よりも優れていることを裏付けるものであった。
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© 大気環境学会
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