大気汚染学会誌
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雨水中の溶存アルミニウムの定量への試料の前処理と保存の影響
川久保 進山本 誠深沢 力
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1994 年 29 巻 4 号 p. 196-205

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抄録

降雨初期と後期で採取した雨水をそのまま又は酸添加 (0.2M塩酸酸性), 濾過 (フィルター孔径0.45μm), 遠心分離して, 8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸螢光法で溶存アルミニウム濃度Aldを定量し, これらの前処理や試料保存によるAldの変化を調べた。また, 全アルミニウム濃度Altを定量して, 非溶存アルミニウム濃度Alu=Alt-Aldを求めた。初期雨水のAldは20~200ngml-1であったが, 降雨量3~5mm以上の後期雨水では1~5ngml-1まで減少した。酸添加試料では, Aldが高くなり, 試料中の固体粒子からのアルミニウムの溶出によると思われた。濾過や遠心分離では, 試料のpHが5以上になるとAldは低くなったが, pH4前後では問題なかった。試料の保存には, 溶存アルミニウム定量値の変化が少なかったポリスチレン製容器を使った。試料をそのまま保存するとAldは徐々に増加した。濾過や遠心分離試料では, 初期雨水の場合, Aluは90%以上除かれており, 3日間程度保存してもAldは殆ど変化しなかったが, 後期雨水の場合, 非溶存アルミニウムの除去は30~80%と不完全であり, 保存においてAldが増加することがあった。以上で述べたAldの変化については, 固体粒子やフィルターへのアルミニウムの吸着や固体粒子からの溶出を基に議論した。本研究で用いた螢光法は, 雨水に近いpHで, 1ng ml-1までの溶存アルミニウムが前処理せずに迅速に定量でき, 雨水分析に適していた。

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