大気汚染学会誌
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高次の乱流統計量をもとにした大気拡散モデル
ラグランジュ型粒子モデルを軸として
市川 陽一佐田 幸一朝倉 一雄
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1994 年 29 巻 6 号 p. 297-312

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抄録

最近, 濃度分布の予測に風速変動の2次以上のモーメントやエネルギーの散逸率, 時間スケールなど高次の乱流統計量が使用されるようになってきた。本報告では, 大気中の物質移動現象を支配する高次の乱流統計量をもとにした拡散予測手法のうち, 特にラグランジュ型粒子モデルに焦点をあてて述べた。ラグランジュ型粒子モデルの特徴は以下の通りである。(1) 地形や熱, 植生などによって生じる複雑な気流場における拡散解析に適用できる。(2) ラグランジュ的な考え方は自然でわかりやすい。また, オイラー型モデルと異なり, 数値解法上の問題がほとんどない。(3) クロージャーモデルと違い, モデル化に労力を割かなくて済む。
ラグランジュ型粒子モデルには, 25年におよぶ開発過程があり, その間に乱れの非均質性, 非正規性を組み込むことができるようになった。非均質性, 非正規性を考慮できるラグランジュ型粒子モデルは, 現在のところ, 対流境界層の拡散予測によい成果をあげている。今後, 複雑地形上の3次元拡散予測, 植生あるいは都市キャノピー内での拡散予測, 濃度変動予測などでの活用が期待できる。

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