大気汚染学会誌
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悪臭の評価因子としての嗅感覚の時間特性に関する実験的検討
樋口 隆哉西田 耕之助樋口 能士武内 伸勝土橋 隆二郎
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1994 年 29 巻 6 号 p. 313-322

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抄録

嗅感覚の時間特性のうち, 吸入時間と連続的曝露に関する実験的検討を行った。ただし, ここでは嗅感覚を嗅覚性刺激による “におい” と非嗅覚性刺激 (三叉神経性刺激) による “刺激性” の両面からとらえ, 相互に比較, 対応させた。
まず, 吸入時間を変化させたときの, におい物質と刺激性物質のにおいおよび刺激の知覚強度を測定した結果, におい物質, 刺激性物質ともに, においの知覚強度は低濃度においては吸入時間とともに増大したが, 高濃度においては逆に減少する傾向を示した。一方, 刺激の知覚強度は吸入時間とともに増大し, 物質濃度と吸入時間の積としての全体の物質量が重要な因子となっていることが見いだされた。よって, 臭袋を用いた官能試験を行う際には, 各被験者の吸入時間を一定にすることが重要であると考えられた。次に, におい物質と刺激性物質を連続的に曝露したときのにおいおよび刺激の知覚強度の変化を測定した結果, におい物質, 刺激性物質ともに, においの知覚強度は時間の経過とともに低下したのに対し, 刺激の知覚強度は上昇し, しかも変動する傾向を示した。このことから, 臭気の連続的曝露においては, 刺激性の感覚的応答特性に十分留意して臭気の評価, 規制を行う必要があることが明らかとなった。

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