1994 年 29 巻 6 号 p. 340-350
都市部における観測データの解析から, SPMは大気中の湿度によって粒子内の重量が変化すると考えられたので, 相対湿度の変化による水分影響を考慮に入れたSPMシミュレーションを行った。拡散モデルとしては多重ボックスモデルを用いた。このモデルでは乱流拡散とモデルの性格上生じる疑似拡散の両者が濃度に影響を与えるので, 最初に疑似拡散の補正法について考察し, 新しい補正方法を提案した。この補正を適用すると, 結果的に同時に実際の乱流拡散も適切に表現されるようになり, 計算手法上の問題は解決された。
SPM濃度への水分影響については, Winklerの経験式 (都市域の粒子状物質に及ぼす水分影響を表したもの) を若干単純化したモデルを用いた。計算は東京都全域を対象に, 冬季高濃度が出現した日から4例を抽出して行った。その結果, 水分を考慮しなかった場合に比べ, 水分影響を考慮した計算結果はより実測濃度に近づいた。