大気環境学会誌
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赤城山で発生する酸性霧と大気汚染の解析
汚染大気の輸送を中心として
池田 有光安田 龍介東野 晴行渡辺 竜馬畠山 史郎村野 健太郎
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1995 年 30 巻 2 号 p. 113-125

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抄録

1984年以来, 9月下旬から10月上旬にかけて赤城山において霧の野外観測を行ってきた。本研究では, 1990年9月28日にかけて行った観測で得られた赤城山の霧水の汚染度と大気汚染状況をもとに, 関東平野と赤城山周辺における大気汚染物質の輸送と酸性霧の発生過程についての考察を行った。その結果, 赤城山に初秋発生する霧は, 硝酸イオンと硫酸イオンの濃度比が非常に大きいという特徴を示した。また赤城山での大気汚染は平野部地表付近の大気汚染と風系の状態と比較すると, 平野部の地表面近くの現象のみからでは赤城山の状態を十分説明することができず, 三次元的な風の立体分布による解析が不可欠であることがわかった。そこで, 変分モデルにより限られた数の風速データを使って地形の影響を考慮した三次元の風速場を推定し, これを用いて仮想粒子の追跡を行い, 東京近郊から赤城山を中心とした山岳部へ至る輸送過程の可視化を行った。その結果, 海陸風に支配される複雑な輸送パターンが得られた。また平野部の現象からは説明できなかった夕方から夜間にかけて山頂で観測されたO3等の高濃度を起こしている気塊の移動過程を示し, そのうちでもとくに高濃度になった24日夕方については, 関東平野上空で大気の停滞が起き, それに伴う汚染物質の蓄積の結果であることを明らかにすることができた。

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