大気環境学会誌
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P/G線図の拡散幅に対応するMonin-Obukhovの長さの導出
安達 隆史
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1995 年 30 巻 4 号 p. 224-232

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抄録

環境アセスメント等の大気汚染濃度の推算の場合, 世界的に広く使われているPasquill/Giffordの拡散幅の線図 (いわゆるP/G線図) に対応させて, 我国では風速と日射量あるいは放射収支量の観測値を組み合わせた原子力安全研究協会 (原安協) 方式の大気安定度階級表が広く使われており, これは環境庁や原子力安全委員会の指針等にも採用されている。しかし, この大気安定度階級は大気境界層の理論や実験式のパラメータとしてそのまま適用できないので不便を感ずることがある。この場合, 既にGolderが野外観測値を用いて, 粗度, 大気安定度階級およびMonin-Obukhovの長さ (L) との平均的な関係を線図にとりまとめているので利用できそうであるが, Golderが用いた観測値がすべて外国のものであること, 更に大気安定度階級は元々のPasquillやTurnerに準拠した方式で推定されているために, 我国の原安協方式に適用可能であるかどうかを確認する必要がある。当研究ではGolderの方法とは異なり, 上記の原安協方式の大気安定度階級表を元に中緯度の草原の平均的な反射率 (25%) とボーエン比 (昼間: 0.4, 夜間: 潜熱フラックスを無視) を仮定し, 更にP/G線図の元になった拡散実験が行われた草原の粗度 (約3cm) を接地境界層の式に適用し, 図解法を併用しながらLの値を導き, 対応するGolderの線図の読み取り値と比較したところ両者は比較的良く一致した。
従って, P/G線図の拡散幅に対応するとされる原安協方式の大気安定度階級に, 粗度が約3cmの場合のGolderのLを対応させて用いても良いと思われる

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