大気環境学会誌
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長岡市における大気降下物中セレンの季節変動とその供給源
横尾 保子福崎 紀夫大泉 毅森山 登
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1995 年 30 巻 4 号 p. 276-283

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抄録

新潟県長岡市における大気降下物中の溶解性セレンおよび不溶解性セレンを定量し, その季節変動や非海塩性硫黄との元素比などを考察することによりその供給源について検討した。溶解性セレンの濃度は, 0.032~0.41μg・1-1の範囲に, 年間降下量は0.22~0.43mg・m-2・yr-1の範囲にあった。不溶解性セレンの年間降下量は全セレン降下量のほぼ10%以下であった。溶解性セレンの濃度および降下量は, 非海1塩性硫黄 (nss-S) とともに夏季に低く, 冬季に高いという顕著な季節変動を示し, nss-Sに対するセレンの元素比 (Se/nss-S) も同様な季節変動を示した。長岡における夏季の溶解性セレン濃度は山岳・清浄地域における値よりもやや高く, また, Se/nss-Sは低い値を示すことから, 夏季の大気降下物は石油燃焼や生物活動等の比較的ローカルな供給源の影響を受けているものと考えられる。一方, 冬季にはSe/nss-S比は夏季よりも高い値を示し, これまで報告されている石炭中の硫黄に対するセレンの元素比 (Se/S) に近い値となることから, 東アジア地域における石炭燃焼の影響を受けているものと考えられる。

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