大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
硫酸添加により酸性化させた褐色森林土で育成したスギ苗の光合成活性
太田垣 貴啓三輪 誠伊豆田 猛戸塚 績
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 31 巻 1 号 p. 11-19

詳細
抄録

硫酸溶液の添加により酸性化させた褐色森林土で育成したスギ苗の光合成活性を調べた。土壌を酸性化させるために, 土壌1lに対して, 20または30meqのH+イオンを硫酸溶液で添加した。また, 硫酸溶液を添加しない土壌を対照土壌とした。硫酸溶液を添加した土壌または対照土壌を詰めた500ml容のポットにスギ (Cryptomeria japonica D. Don) の2年生苗を移植し, 1993年6月8日から8月31日までの12週間にわたって温室内で育成した。
移植8週間後および12週間後にスギ苗の純光合成速度を測定した結果, 硫酸添加処理によって対照区に比べて有意に低下した。また, スギ苗の光一光合成曲線およびCO2-光合成曲線より, 量子収率と炭酸固定効率をそれぞれ算出した結果, 硫酸添加処理区で育成したスギ苗の量子収率は対照区のそれと有意な差は認められなかったが, 炭酸固定効率は有意に低下した, さらに, スギ苗地上部のAl濃度と炭酸固定効率との間には, 高い負の相関が認められた。
以上の結果より, 硫酸添加処理区で育成したスギ苗の光合成阻害は, 炭酸固定系の活性低下が原因であり, この活性低下にはスギ苗の地上部におけるAl濃度の増加が関与していると考えられた。

著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top