大気環境学会誌
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大気暴露した青銅板の腐食
形見 武男西川 治光高原 康光
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1996 年 31 巻 4 号 p. 149-157

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抄録

青銅板および研磨した青銅板を屋内と屋外に暴露させ, 腐食生成物と大気汚染物質を調査して腐食要因について検討を行い, 次の結果を得た。
1年間暴露では青銅板の腐食は銅板に比べて見掛けの重量変化が大きかった。青銅板のり一チング試験において, 成分金属のうち特に銅・亜鉛・鉛の溶出が認められ, 屋外暴露の重量減少の大きな要因と考えられた。また, 青銅板の腐食要因としては, 初期の腐食生成物の形成にはガス状大気汚染物質の寄与が大きく, 腐食生成物の離脱は雨水による溶出の寄与が大きいと推察された。
1年間暴露した青銅板表面の蛍光X線分析から, 暴露前には検出されなかった硫黄, 塩素, ケイ素が検出され, その検出量は大気汚染物質濃度が高い国道周辺において最も多かった。硫黄は屋内に比べて屋外の検出量が少なかったが, これは雨水の洗浄効果によるものと考えられた。
FT-IR分析およびX線回折から表面の腐食成分は酸化銅 (1) および硫酸塩 (または錯体) が主要成分と推察され, 銅板で顕著に認められる硝酸塩 (ニトラト錯体) や酸化銅 (II) は青銅板ではほとんど認められなかった。
これらのことから, 青銅板は合金であるため, 構成金属成分がイオン化しやすく雨水により金属成分の溶出が起こりやすかったが, 大気中の窒素酸化物による影響は比較的少なく, 銅の二価への酸化も進行しにくいことが認められた。

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