大気環境学会誌
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キュウリ第一本葉の生長と生理活性に及ぼすUV-B照射の影響
肥料の影響
村瀬 憲昭近藤 矩朗清水 英幸中嶋 信美伊豆田 猛戸塚 績
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1997 年 32 巻 1 号 p. 38-45

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抄録

UV-Bによる植物の生長阻害のメカニズムを明らかにすることを目的として, 肥料を与えたキュウリと与えないキュウりにUV-B照射したときに第一本葉が受ける影響を比較した。肥料添加を行うと, 肥料を与えない場合と比べて第一本葉の生長は促進されたが, UV-B照射により生長が顕著に低下した。一方, 肥料を与えない場合にはUV-B照射によってほとんど生長は阻寄されなかった。また, 肥料の成分である窒素, リン, カリウムをそれぞれ添加し, UV-B照射が第一本葉の生長に及ぼす影響を調べた。どの成分も生長を促進し, UV-B照射による生長阻害の程度を増大したが, 特に窒素の場合に影響が大きかった。
UV-B照射により第一本葉の光合成活性が低下した。したがって, 第一本葉の乾物生長低下は光合成活性の低下に依っていると考えられる。活性酸素の解毒酵素の一つであるアスコルビン酸ペルオキシダーゼの活性がUV-B照射により増加した。したがって, UV-B照射を受けた第一本葉において活性酸素が発生している可能性があり, 光合成活性低下に活性酸素が関与していると思われる。サイトカイニンの一種であるベンジルアデニン (BA) 処理により第一本葉の生長は促進された。BAの効果は肥料を与えたキュウリの第一本葉で特に顕著であったが, UV-B照射したものでは生長促進が見られなかった。この結果は, UV-B照射により第一本葉のサイトカイニンに対する感受性が低下したことを示唆している。また, 各処理区第一本葉のエタノール抽出物中の生長促進活性を測定したところ, 肥料添加のみを行った処理区の抽出物の生長促進活性が特異的に高いことが明らかになった。したがって, 肥料添加により生長促進物質が増加し, UV-B照射によりそれらが分解あるいは酸化した可能性がある。これらの結果より, 肥料添加を行ってUV-B照射したときの第一本葉の生長低下は, サイトカイニンなどの植物ホルモンに対する感受性の低下や, ホルモン活性の低下によって引き起こされたと考えられる。

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