大気環境学会誌
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東アジア地域を対象とした酸性降下物の沈着量推定
モデルの開発および現況再現性評価
池田 有光東野 晴行伊原 国生溝畑 朗
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1997 年 32 巻 2 号 p. 116-135

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抄録

東アジア地域における年間沈着量や季節別沈着量など長期の酸性汚染物質の総降下量を把握するために, 物理・化学過程を簡潔に表現したオイラー型の3次元グリッドモデルを開発した。モデルの開発とあわせて日本列島における酸性降下物の濃度, 沈着量を推定し, 実測地との比較検討を行った。対象物としては, 既存の研究例で多く行われている硫黄酸化物に加えて窒素酸化物についての評価も行った。
全国を5つに分けた各領域で, SO42-, NO3-の湿性沈着量の観測値と計算値比較を行ったところ, 高い相関が得られ, 湿性沈着の各領域での特徴は再現できていることがわかった。全国16地点を抜き出し, 降水中のSO42-, NO3-濃度の観測値と計算値の比較を行った結果, 極端なピーク値を除いて, 月別変動の傾向は本モデルで十分再現できることかわかった。大気中の汚染物質濃度について現況再現性の評価を行った結果, 本モデルでの計算値は実測値と比較して妥当なレベルであり, SO2, NO2, NO3-については月間変動の再現性も良好であった。
以上から, 本モデルは, 年間や季節ごとといったような長期間にわたる沈着の傾向を十分再現出来ることがわかった。

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