大気環境学会誌
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代理表面を用いた乾性沈着機構の研究
I. 乾, 湿面への乾性沈着量と揮散および化学的変質の影響
下原 孝章大石 興弘村野 健太郎植田 洋匡
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1997 年 32 巻 4 号 p. 253-266

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抄録

乾いたシャーレおよび水を張ったシャーレを代理表面として用い, それらを1日, 5日, 10日間, 非降水時の環境中に曝露し, 乾性成分の沈着機構を研究した。同時に, フィルター捕集により大気中のガス状物質および粒子状物質中のイオン成分濃度を測定した。これらの調査は, 1994年および1995年の春期に80日間実施した。大気中の乾性成分濃度と, 乾き面および水面での沈着成分の再揮散および化学的変質に伴う乾性成分の沈着率との関係を, 沈着面の性質および曝露期間の差の比較から評価した。
Na+, Cr-, Mg2+およびCa2+等の主に粗大粒子に含まれる成分では, その大気中の濃度推移と乾き面, 水面への沈着量の推移との間に比較的高い相関が認められた。特に, これら成分の乾き面, 水面への沈着量はほぼ等しく, 乾き面での沈着量の推移と水面での沈着量の推移との間の相関は非常に高かった。これらの結果から, Na+, Cl-, Mg2+およびCa2+の乾き面, 水面への沈着機構は沈着面の性質によらず同一と考えられた。
NH4+, NO3-およびSO42-の微小粒子では, 大気中の濃度の推移と乾き面への沈着量の推移との間の相関は極めて弱かった。このうち, NH4+とNO3-は乾き面に沈着後, その一部が再揮散する現象が認められた。
水面に沈着したNH4+, NO3-およびSO42-成分は, 主に, ガス状NH3, HNO3およびSO2の沈着影響によることが分かった。特に, 水面へはSO2が沈着しやすく, SO2からSO42-への変換によりH+が生成し, 水面を酸性化することが分かった。大気中のSO42-濃度の推移は, 乾き面よび水面へのSO42-の沈着量の推移との間の相関が共に弱かった。
曝露期間が長くなるにつれ, 乾き面上に沈着した炭酸塩粒子は大気中のSO2との反応により, 極めて緩やかながらも硫酸塩へと変換される現象が推察された。

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