大気環境学会誌
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都市大気中の有機塩素化合物濃度
中嶋 敏秋近藤 秀治
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1998 年 33 巻 1 号 p. 42-49

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抄録

札幌市内の2ヵ所で, 1997年3月まで4~5年の長期間にわたって大気中のクロロホルム, 四塩化炭素, 1, 1, 1-トリクロロエタン, トクリロロエチレンおよびテトラクロロエチレンの測定を行い, 大気中濃度の実態や挙動について考察した。
各有機塩素化合物の濃度はおおむね夏期に低く, 冬期に高くなる傾向を示した。調査期間中, 四塩化炭素濃度および1, 1, 1一トリクロロエタン濃度は増加する傾向がみられた。一方, トリクロロエチレン, テトラクロロエチレンおよびクロロホルムの各濃度は減少する傾向が見られた。
各有機塩素化合物とも市の中心部に近い環境研の方が, 市の中心部から離れている真駒内より高濃度を示したが, 反応性が小さく分解しにくいために大気中に長期間残留する四塩化炭素と1, 1, 1-トリクロロエタンは, 両地点間の濃度比が小さく, 度数分布が正規対称分布であることからも両地点で測定された四塩化炭素と1, 1, 1-トリクロロエタンは, 広域汚染によるものであると考えられる。一方, クロロホルムとテトラクロロエチレンの濃度比が大きいのは, 地域の発生源の有無あるいは大気中での分解のしやすさによるものと考えられる。
真駒内で測定された各有機塩素化合物の濃度は, 風向きによる変動や風速との相関関係が認められず, 地域の発生源の影響を受けない広域汚染によるものと考えられる。

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